「稟議を通して、時間もお金もかけて新しいシステムを導入したのに、現場がなかなか使ってくれない」というご相談を、情報システムやDX推進の担当者の方からよくいただきます。ツールの選定は慎重に進めたのに、いざ配って研修を一度やったきりで、気づけば以前のやり方に戻っていた、というお話です。
私たちは、この問題の多くは現場のやる気の問題ではなく、使いこなせる状態が用意されていないことに原因があると考えています。操作が分からない、聞ける人がその場にいない、参照できるマニュアルが無いか古い、という三つがそろうと、人は無理をして新しいやり方を続けるより、慣れたやり方に戻ってしまいます。本記事では、導入したシステムを現場で使われる状態にする、定着の進め方を整理します。
なぜ導入しても使われないのか
システムの導入は、契約してアカウントを配った時点では終わりません。むしろそこからが本番で、現場の一人ひとりが日々の業務の中で自然に使うようになって、はじめて定着したと言えます。ところが、その最後の一段が抜け落ちてしまうことが少なくありません。
理由の一つは、操作の分からなさです。新しい画面は、慣れるまではどこを押せばよいのか迷います。迷うたびに手が止まると、締め切りのある業務の中では、結局それまでのやり方を選んでしまいます。
もう一つは、聞ける相手がいないことです。導入直後は詳しい人が近くにいても、時間が経つとその人も忙しくなり、部署が違えば聞きにいくこと自体がためらわれます。分からないことを抱えたまま放置されると、システムから足が遠のいていきます。
使われないシステムは、機能が足りないからではなく、使いこなすための道案内が用意されていないことが多い、と私たちは考えています。導入の成否は、配った後にどれだけ現場を支えられるかで決まります。
そしてマニュアルの問題があります。作られていないか、作られていても文章だけで画面と対応させにくく、システムの更新に追いつかず古くなっている。こうした状態では、困った人が頼る先そのものが機能しません。
定着とデジタルアダプションの考え方
導入したツールを現場に根づかせるという考え方は、デジタルアダプションと呼ばれます。ツールを配ることと、ツールが使われることを分けて捉え、後者を意図的に設計するという発想です。
ここで大切なのは、オンボーディングを一度きりの研修で終わらせないことです。最初の説明会で全部を伝えようとしても、人は使う場面になるまで覚えられません。必要になったそのときに、その場で確認できる状態を用意しておくほうが、定着にはずっと効きます。
ポイント: 定着は「教える回数を増やす」ことではなく、「聞かなくても自分で確認できる状態を作る」ことで進みます。教える側の負担を減らしながら、現場が自走できる仕組みを目指すのが近道です。
操作手順を残すこと自体の進め方は、業務システムの操作手順をマニュアル化するで詳しく整理しています。本記事では、作った手順を現場に届け、使われ続ける状態にするところに焦点を当てます。
その場で参照できる状態にする
定着を後押しするうえで効くのは、困った瞬間に手が届く場所へマニュアルを置いておくことです。分厚い資料を探しにいかなければ見つからない状態では、忙しい現場では使われません。
一つのやり方は、操作画面のそばから参照できるようにしておくことです。この画面で迷ったらこの手順、という結びつきが分かっていれば、人に聞く前に自分で確かめられます。
もう一つは、掲示や機器のそばに置いたQRコードから開けるようにしておくことです。現場に立った人が、その場で端末を取り出して読み取れば、関連する手順にたどり着けます。この考え方は、現場でQRからマニュアルを開くでも掘り下げています。
さらに、マニュアルが増えてくると、今度は目的の手順を探すこと自体が手間になります。困っている人が言葉で問いかけて答えにたどり着ける状態にしておくと、探す負担が下がります。この考え方は、探すマニュアルから聞くマニュアルへで整理しています。
運用で気をつけたいこと
定着の取り組みは、始めることよりも続けることのほうが難しい面があります。いくつか気をつけたい点を挙げます。
システムは更新のたびに画面や手順が変わります。マニュアルが古いまま残っていると、かえって現場を混乱させ、システムそのものへの不信につながります。誰がいつ見直すのかという担当を最初に決めておくと、放置されにくくなります。
対象を欲張りすぎないことも大切です。すべての機能を一度にマニュアル化しようとすると負担が大きく、続きません。まずは現場がいちばんつまずく操作、問い合わせの多い操作から整えていくと、効果を実感しやすくなります。
注意: マニュアルを配っただけで定着したと考えないようにします。実際に見られているか、どこでつまずいているかを拾い、内容を直していく往復があってはじめて、現場に根づいていきます。
権限の設計も忘れないようにします。部署や役割によって見せたい手順が違う場合、誰がどのマニュアルを見られるのかを整理しておくと、情報が混ざらず、必要な人に必要な手順が届きます。
Flowbaseでの考え方
私たちが提供しているFlowbaseは、システムを操作している画面を録画すると、AIが映像を解析して操作手順の下書きを作る仕組みです。定着の土台になる操作マニュアルを、特別な資料作成の時間を取らずに用意できることを目指しています。
作った手順は、音声付きの動画、ステップごとの手順、スライドといった形で出力でき、現場の見る環境に合わせて渡せます。最大56言語でナレーションを付けられるため、多国籍の現場でも同じ手順を共有しやすくなります。URLやQRコード、パスワードでの共有に対応しているので、画面のそばや掲示から参照できる状態を作れます。蓄積したマニュアルはチャットから検索したり質問したりでき、増えても探しやすさを保てます。システムの更新に合わせて撮り直せるよう、バージョン管理にも対応しています。
大切なのは、ツールで作って配って終わりにせず、現場で本当に使われているかを見ながら、手順を育てていくことだと考えています。導入したシステムを現場の力に変えていくお手伝いを、プロダクトとAIの精度を一緒に調整しながら進めていきたいと考えています。まずは問い合わせの多い操作から小さく試して、合うかどうかを一緒に確かめさせてください。
よくある質問
Q研修をしっかりやれば定着するのではないですか?
研修は入り口として大切ですが、一度の研修で覚えたことは、使う場面が来る前に忘れてしまいがちです。必要になったそのときに、その場で確認できる手段を用意しておくと、研修で伝えきれなかった部分を現場が自分で補えるようになります。研修と、その場で参照できるマニュアルを組み合わせることをおすすめします。
Qどの操作からマニュアルにすればよいですか?
現場からの問い合わせが多い操作や、みんながつまずきやすい操作から始めるのがおすすめです。効果を実感しやすいところから整えていくと、取り組みが続けやすくなります。すべての機能を一度にそろえる必要はありません。
Qシステムが更新されるたびにマニュアルを作り直すのは大変ではないですか?
更新された画面をもう一度録画すれば、AIが手順の下書きを作り直すため、ゼロから書き直すより負担を抑えられます。バージョン管理に対応しているので、最新の手順を保ちながら、過去の版もさかのぼって確認できます。