あるバックオフィスの現場で、業務システムの操作手順を画面録画でまとめていた方から、こんな相談をいただいたことがあります。手順書自体はきれいにできあがったものの、いざ協力会社に渡そうとしたら、スクリーンショットのあちこちに顧客の氏名やメールアドレスが映り込んでいることに気づいた、というのです。1枚ずつ画像編集ソフトで黒く塗りつぶしていったものの、枚数が多く時間がかかり、しかも後から「1枚だけ消し忘れていた」と冷や汗をかいた、という話でした。
これは、手順書を実際の画面から作るときに必ずつきまとう悩みです。作業のリアルさを残そうとすると、そこに映る実データもいっしょに残ってしまいます。本記事では、この「映り込む個人情報」という盲点を、手作業ではなくAIの自動処理でほどいていく考え方をご紹介します。
手順書に個人情報が映り込むという盲点
手順書は、実際の操作画面を見せられるほど分かりやすくなります。ダミーの画面よりも、本番のシステムを操作している様子のほうが、現場の人にはずっと伝わります。ところが、その分かりやすさと引き換えに、画面に表示されている実際のデータもそのまま記録されてしまいます。
映り込みやすいのは、たとえば次のような情報です。
- 顧客や取引先の氏名、会社名、電話番号、メールアドレス
- 従業員IDや社員番号、口座情報などの管理番号
- 顧客一覧や案件一覧に並ぶ、複数人分の個人データ
やっかいなのは、こうした情報が画面の主役ではなく、隅のほうにさりげなく表示されている点です。手順を説明したいのはボタンの押し方なのに、その背後の一覧にたまたま実名が並んでいる、ということが起こります。作る本人は操作に集中しているため、映り込みに気づかないまま公開に進んでしまいがちです。
手作業のマスキングが抱える限界
映り込みに気づいたとしても、そこから1枚ずつ手で伏せていく作業には、いくつもの負担があります。
まず、単純に時間がかかります。手順書はスクリーンショットが何十枚にもなることが珍しくなく、その一枚一枚を開いて、どこに個人情報があるかを目で確認し、塗りつぶしていくのは根気のいる作業です。次に、消し忘れが起きます。人の目でくまなく確認するのは限界があり、急いでいるときほど見落としが生まれます。そして、手順を撮り直すたびに、この作業がまた最初からやり直しになります。
分かりやすさのために本番画面を残したい。けれど、そこに映る実データは残したくない。この二つの要望は、手作業では両立させにくいものでした。
塗りつぶしの一手間があるために、外部への共有そのものをためらってしまう、というお話もよくうかがいます。せっかく整えた手順書が、個人情報の心配から社内の一部にとどまり、必要な人に届かないのは、もったいないことだと私たちは考えています。
AIが自動で検知して伏せる
そこで、映り込みへの対処を人の目と手に頼るのをやめ、AIに任せるという考え方に切り替えます。近年のAIは、画像の中のどこに氏名やメールアドレス、番号といった個人情報が表示されているかを読み取れるようになってきました。表示されている位置を見つけ出し、その部分だけを自動で伏せる、という処理が実用の段階に入っています。
ポイントは、画面全体を隠すのではなく、個人情報にあたる部分だけをピンポイントで伏せるところにあります。操作の説明に必要なボタンや画面の流れはそのまま残るので、手順書としての分かりやすさは損なわれません。分かりやすさと安全性を、どちらかをあきらめることなく両立させられるようになります。
Flowbaseでできること
Flowbaseは、画面録画や動画をアップロードするだけで、AIが作業の工程を区切り、手順ごとのスクリーンショットと説明文を自動で生成するツールです。このスクリーンショットを作る過程で、映り込んだ個人情報の検知と伏せる処理もあわせて行います。
検知した箇所は自動でモザイク処理(ピクセル化)がかかり、伏せられた状態のスクリーンショットが手順書に並びます。作る人が1枚ずつ確認して塗りつぶす、という工程を省けるため、外部共有までのハードルがぐっと下がります。閲覧する人や共有相手に表示されるのは、この伏せた版です。書き出したファイルにも伏せた版が使われます。一方で、もとの画像も保持されており、編集権限を持つ人は、伏せる範囲を後から調整するときにもとの画面を確認できます。
共有の面でも、リンクごとに閲覧や編集の権限を割り当てられ、必要に応じてパスワードを設定して渡せます。誰が見られる状態なのかを制御しながら、個人情報を伏せた手順書だけを社外に届ける、という運用がしやすくなります。権限やセキュリティの考え方は、業務マニュアルを安心して共有するための権限とセキュリティの考え方でも詳しくご説明しています。
自動処理を過信しすぎない: AIの自動マスキングは手間を大きく減らしますが、すべての映り込みを完璧に捉えるとは限りません。特に社外へ公開する前は、伏せられているかを人の目でも一度確認する運用をおすすめします。自動処理で大半を伏せ、最後の確認だけ人が行う、という組み合わせが現実的です。
運用で意識したいこと
自動マスキングを前提にすると、手順書づくりの進め方も少し変わります。まず、映り込みを気にしすぎて操作をためらう必要がなくなるので、いつもの業務をそのまま録画しやすくなります。神経質にダミーデータへ差し替えてから撮る、という準備の手間を減らせます。
一方で、機微な情報を扱う画面では、そもそも撮る範囲を絞る、テスト用のデータで操作する、といった基本的な配慮を組み合わせると、より安心です。自動マスキングは最後の砦として頼りつつ、入口でもリスクを下げておく、という二段構えが望ましいと私たちは考えています。操作マニュアルを安全に育てていくための、土台となる考え方です。
よくある質問
Qどんな種類の情報が自動で伏せられますか?
画面に表示された氏名やメールアドレス、電話番号、各種の管理番号といった個人情報にあたる部分を検知して伏せます。ただし、扱う情報は現場ごとに異なりますので、公開前には人の目でも確認いただくことをおすすめしています。
Q伏せると、手順が分かりにくくなりませんか?
個人情報にあたる部分だけをピンポイントで伏せる仕組みのため、操作に必要なボタンや画面の流れはそのまま残ります。手順書としての分かりやすさを保ったまま、映り込みだけを隠せます。
Qもとの画像は残りますか?
はい、もとの画像と伏せた画像の両方を保持します。閲覧する人や共有相手に表示されるのは伏せた版で、書き出したファイルにも伏せた版が使われます。もとの画像は、編集権限を持つ人が伏せる範囲を調整するときに確認できます。
Q社外に渡すときの見せ方を制御できますか?
共有リンクごとに閲覧や編集の権限を割り当てられ、必要に応じてパスワードを設定できます。個人情報を伏せた手順書を、相手に応じた権限で安全に届けられます。