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マニュアルは、人だけでなくAIも読む時代へ:動画から生まれる業務データという視点

動画から作るマニュアルは、人が読むための手順書であると同時に、構造化された業務データでもあります。その二面性を、社内のAI基盤にどう活かせるかという視点で整理します。

Flowbase編集部2026年7月1日8分
AI・技術
マニュアルは業務データにもなる

マニュアルは、人だけでなくAIも読む時代へ

動画から生まれる業務データという視点

これまでマニュアルは、人が読んで手順をたどるためのものでした。新人が業務を覚えるとき、久しぶりの作業を思い出すとき、読者はいつも人でした。ところが最近、その前提が少しずつ変わりつつあると感じています。マニュアルを読む相手が、人だけではなくなってきたのです。

動画を録画して自動で作られるマニュアルの中身を、あらためて分解してみます。そこにあるのは、手順を並べたテキスト、操作のタイミングごとに切り出したスクリーンショット、そして各ステップの説明文です。これらは人が読むために整えられたものですが、見方を変えると、時系列に沿って構造化された業務の記録でもあります。つまり、人向けのマニュアルであると同時に、AIが扱いやすい業務データでもある、という二面性を持っています。

本記事では、この二面性を出発点に、動画から生まれるマニュアルを社内のAI基盤にどう活かせるかを整理します。まだ発展途上の使い方も含みますので、夢を語りすぎず、現実的なところも正直に書いていきます。

マニュアルの新しい役割

マニュアルの役割が広がった背景には、業務の中でAIを使う場面が増えたことがあります。社内の問い合わせ対応、業務の下調べ、資料の下書きなど、これまで人が担っていた作業の一部をAIに任せる動きが出てきました。

そのとき、AIに「自社のやり方」を理解してもらう必要が出てきます。汎用的な生成AIは、一般的な知識は豊富に持っていますが、自社の申請フローや判断基準までは知りません。会社ごとの正解は、その会社の中にしか存在しないからです。そこで、社内に蓄えられた業務知識をAIに渡す土台が求められます。

マニュアルは、その土台としてよくできています。手順が順序立っていて、判断の理由が言語化されていて、画面と操作が結びついている。人が読んで再現できるように整えられた情報は、AIにとっても扱いやすい形をしています。人のための整備が、そのままAIのための整備を兼ねる。この関係についてはコンテキストエンジニアリングの記事でも触れています。

人が読んで再現できるマニュアルは、AIにとっても扱いやすい業務データになります。二重に準備する必要はなく、一度きちんと構造化すれば、その成果物が人とAIの両方に効きます。

生成物は、業務データでもある

もう少し具体的に、マニュアルの中身がどんな業務データになるのかを見ていきます。動画から作られたマニュアルには、おおむね次のような要素が含まれます。

一つは、手順のテキストです。「どの画面で」「何を」「どの順に」操作したかが、ステップに分解されて残ります。これは、その業務が実際にどう進むかを記述した、業務フローそのものです。

もう一つは、時系列のスクリーンショットです。各ステップで画面がどう変わったかが、順番に紐づいています。言葉だけでは伝わりにくい操作の実際が、視覚的な記録として残ります。

そして、操作の説明文です。なぜその操作をするのか、どこに注意するのかといった補足が、ステップごとに添えられます。ここには、担当者の判断や勘所が言語化されて含まれることがあります。

これらを合わせると、一本のマニュアルは「ある業務が、どんな手順で、どんな画面で、どんな判断をともなって進むか」を構造化した記録になります。人が読めば手順書ですが、データとして見れば、その業務の棚卸しがそのまま済んでいる状態と言えます。

ポイント: マニュアルを「作って終わる文書」ではなく「業務を構造化したデータ」と捉え直すと、使い道が一段広がります。人が読む用途に加えて、AIに渡して分析や下調べに使う、という二つ目の出口が見えてきます。

AIに渡すと、何ができるのか

構造化された業務データを社内のAI基盤に渡すと、いくつかの使い方が考えられます。ここでは、実際に手が届きやすいものから順に挙げていきます。

一つは、マニュアルを根拠にした質問への回答です。手順書を検索して答えの根拠にするRAG(検索拡張生成)の仕組みで、「この作業、次どうするんでしたっけ」といった問い合わせに、自社の記述に基づいて答えられます。これはすでに現実的で、Flowbaseでも提供している使い方です。

もう一つは、業務の棚卸しや分析の下地です。複数の業務をマニュアル化しておくと、どんな作業が、どこで、どのくらいの手順を踏んで行われているかが、データとして並びます。似た作業の重複、担当者ごとのやり方の違い、手順が多くて負担の大きい工程などを、俯瞰して眺める材料になります。

さらに踏み込んだ使い方として、要件定義の下地にする、という方向があります。ある業務をシステム化したり自動化したりしたいとき、まず必要なのは「その業務が実際にどう進んでいるか」の正確な記述です。属人化した業務を動画に撮り、手順とデータにしてしまえば、それが要件を考える出発点になります。頭の中にある暗黙知を形式知に変える作業を、録画という自然な形で済ませられるからです。

ただし、この要件定義への活用は、まだ一部の先進的なユースケースにとどまります。すべての業務にそのまま当てはまるわけではなく、業務の性質やチームの成熟度によって、効き方は大きく変わります。過度な期待は禁物だと考えています。

標準化された接続で、外部のAIに渡す

社内の業務データを、どうやって外部のAIに渡すか。ここで鍵になるのが、接続の仕組みの標準化です。

これまでは、あるツールのデータを別のAIに渡そうとすると、その組み合わせごとに個別の連携を作る必要がありました。手間がかかるうえ、組み合わせが増えるほど管理も複雑になります。この課題に対して、MCP(Model Context Protocol)のような標準化された接続の仕組みが広がりつつあります。共通の作法でツールとAIをつなぐことで、生成物をClaudeのような外部のAIに渡す使い方が、以前より現実的になってきました。

イメージとしては、マニュアルという業務データに対して、外部のAIが標準の作法で問い合わせられる、という形です。AIの側から「この業務の手順を教えて」と尋ねると、社内のマニュアルを参照して答えを組み立てる。人が検索する代わりに、AIが必要なときに必要な業務知識を引き出す、という使い方です。

標準化された接続の仕組みが整うほど、社内の業務データは「そのAIツール専用の資産」ではなくなり、いろいろなAIから参照できる共通の土台に近づいていきます。

Flowbaseとしても、生成したマニュアルやその中間データを外部のAIへ渡す接続への対応を進めている段階です。ただし、これは現時点で確立した機能ではなく、進めている途中だとご理解ください。ここでも、できることとこれからのことを、正直に分けてお伝えしたいと考えています。

運用の現実的な注意点

ここまで可能性を書いてきましたが、いきなり全部をやろうとすると、たいてい途中で止まります。現実的な進め方として、いくつか押さえておきたい点があります。

まず、対象を絞ることです。すべての業務を一度にデータ化しようとせず、AIに任せたい業務や、属人化して困っている業務を一つ選ぶところから始めます。一本作って、それを実際にAIに渡してみて、手応えを確かめる。この小さな検証を経てから広げるほうが、無理がありません。

次に、元のマニュアルの質が結果を決める、という点です。AIが返す答えは、渡したマニュアルの記述を超えません。中身が曖昧なら、AIの答えも曖昧になります。ですから、まず人が読んで正しく再現できる状態に整えることが先で、そのうえでAIに渡す、という順序を崩さないほうがよいと考えています。

そして、更新を続けることです。業務や画面が変われば、マニュアルも古くなります。古い記録をそのまま参照させれば、AIも古い答えを返します。誰がいつ更新するのかを決めておくことが、データとしての価値を保つ土台になります。

注意: 「AIに渡せば何でも分かる」わけではありません。渡すデータが薄ければ答えも薄く、古ければ古い答えが返ります。まず一つの業務で小さく試し、元のマニュアルを整えることに手をかけるのが、遠回りに見えて近道だと考えています。

Flowbaseでの考え方

私たちが提供しているFlowbaseは、業務をしている画面を録画するだけで、AIが手順・スクリーンショット・説明文を組み立て、業務マニュアルを自動で生成します。作られたマニュアルは横断して検索でき、その内容を根拠にAIへ質問することもできます。ここまでは、すでに使っていただける機能です。

そのうえで私たちは、生成されるマニュアルを「人が読む文書」であると同時に「構造化された業務データ」として捉えています。録画するだけで業務の棚卸しが自然に済み、その成果物が人の学習にもAIへの入力にも使える。この二面性こそ、動画から作るマニュアルの面白いところだと考えています。

生成物やその中間データを外部のAIへ渡す接続については、先に書いたとおり、対応を進めている段階です。要件定義への活用も、現時点では一部の先進的な使い方にとどまり、万能ではありません。まだ発展途上の領域で、すべての現場にそのまま当てはまるとは限りません。

だからこそ、大きな青写真を一気に描くよりも、一つの業務から小さく試していただく形をおすすめしています。お客さまのご相談をいただきながら、プロダクトやAIの精度を一緒に調整し、それぞれの現場に合う使い方を探していきたいと考えています。人が読むマニュアルと、AIが読む業務データ。その両方に効く土台を、無理のないところから育てていければと考えています。

よくある質問

Q動画から作ったマニュアルが、なぜ業務データにもなるのですか?

A

動画から生成されるマニュアルには、手順のテキスト、時系列のスクリーンショット、各ステップの説明文が、順序立てて含まれます。これは人が読むために整えられたものですが、見方を変えると「ある業務がどんな手順と画面で進むか」を構造化した記録でもあります。人向けの文書であると同時に、AIが扱いやすい形をした業務データにもなる、という二面性があります。

QMCPというのは、何のための仕組みですか?

A

MCP(Model Context Protocol)は、ツールやデータとAIを、共通の作法でつなぐための標準化された接続の仕組みです。これまでは組み合わせごとに個別の連携を作る必要がありましたが、共通の作法があると、社内の業務データをさまざまなAIから参照しやすくなります。詳しくはMCPの用語解説をご覧ください。

Qマニュアルを要件定義に使う、というのはすぐにできますか?

A

一部の先進的なユースケースでは始まっていますが、すべての業務にそのまま当てはまるわけではありません。属人化した業務を録画して手順とデータにすれば、その業務が実際にどう進むかの記述になり、要件を考える出発点にはなります。ただし業務の性質やチームの状況によって効き方は変わるため、まずは一つの業務で小さく試すことをおすすめします。

Q外部のAIにマニュアルを渡す機能は、もう使えますか?

A

生成したマニュアルやその中間データを外部のAIへ渡す接続については、Flowbaseとして対応を進めている段階です。現時点で確立した機能としてご提供しているものではありません。一方で、マニュアルを横断検索したり、その内容を根拠にAIへ質問したりする使い方は、すでにお使いいただけます。

#AI活用#業務データ#MCP#要件定義
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