製造・物流・小売の現場で、外国人スタッフが増えてきたが、教育がうまく回らない、というご相談をよくいただきます。先日も、複数の工場を運営する企業の現場責任者の方から、「日本語の手順書を渡しても読み解いてもらえず、結局その場で身ぶり手ぶりを交えて教えるしかない。教える側も教わる側も疲れてしまう」というお声を伺いました。せっかく採用しても、立ち上がりに時間がかかり、注意点が伝わりきらないまま作業に入ってしまう。言葉の壁が、教育の質と安全の両方に影を落としている、というお悩みです。
私たちは、この課題の根っこにあるのは、母語の違うスタッフに「同じ内容を、同じ品質で」届ける手段がなかったことだと考えています。本記事では、なぜ従来の多言語化が大変だったのかを整理したうえで、Flowbaseで1本の録画から音声と字幕を多言語マニュアルにする作り方と、現場で続けるための運用のコツをご紹介します。
なぜ従来の多言語化は大変だったのか
母語の異なるスタッフに手順を届けようとすると、まず立ちはだかるのが翻訳の手間です。手順書を翻訳会社に外注したり、社内で語学のできる人がその都度訳したりと、コストと時間がかかります。対応したい言語が増えるほど、その負担はふくらんでいきます。
さらにやっかいなのが、更新です。現場の手順は少しずつ変わっていきます。手順を直すたびに、各言語の翻訳もやり直さなければならず、追いつかないうちに各言語版が古くなってしまう。気づけば、日本語版と外国語版で書いてある内容が食い違っている、ということが起こりがちです。
そして、紙やテキストの手順書は、そもそも届きにくいという問題もあります。安全に関わる注意点や、機器を扱うときの細かな動作は、文章だけでは細部が伝わりません。文字を読むこと自体が負担なスタッフにとっては、母語に訳されていても、長い文章はハードルが高いままです。
言葉の壁を越えるうえで本当に効くのは、母語に翻訳することと、動作を映像で見せることの組み合わせだと考えています。文字を読むのが負担なスタッフでも、母語のナレーションと字幕が付いた映像なら、見て・聞いて理解しやすくなります。
Flowbaseでどう作るか
Flowbaseでは、いつもの作業を画面録画したり、実際の作業を撮影したりしてアップロードすると、AIが映像を解析して操作や作業の手順を区切り、各ステップのスクリーンショットと説明文、そしてナレーション音声をそろえた動画マニュアルを生成します。まずは日本語で1本の手順書を作るところから始めます。
ここからが多言語化です。Flowbaseは、できあがった手順書のナレーションを、二つの段階で別の言語に変換します。最初に字幕テキストを対象の言語に翻訳し、次にその言語で音声そのものを作り直します。つまり、字幕だけでなく、ナレーション音声まで含めて多言語化されるのが特徴です。読むのが負担なスタッフでも、母語の音声で耳から手順を受け取れます。
対応している言語は50以上で、ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・タイ語・中国語・韓国語・英語など、現場で採用の多い言語をカバーしています。1本の録画から、複数の言語版を用意できるため、同じ手順を母語の違うメンバーそれぞれに、同じ内容で渡せます。
元になった日本語の手順を更新すれば、各言語版もそこから作り直せます。翻訳を一から外注し直すのではなく、元の手順を直して各言語へ展開する、という流れになるため、更新が追いつかずに各言語版だけ古くなる、という事態を避けやすくなります。
運用のコツ
多言語マニュアルは、作って終わりではなく、現場で使われ続けてこそ意味があります。続けるためのコツを三つご紹介します。
一つ目は、配り方です。各言語版の手順をQRコードにして、機器のそばや作業場所に貼っておくと、スタッフが自分の母語の版をその場でスマートフォンから開けます。困ったときに、人を待たずに自分で確認できる状態を作ることが、教える側の負担を軽くします。
二つ目は、更新の進め方です。手順が変わったら、まず元の日本語の手順を直し、そこから各言語版を作り直す、という順番を決めておきます。言語ごとにバラバラに直そうとすると食い違いの原因になるので、日本語を起点に展開する流れにそろえると、内容のずれを抑えられます。
三つ目は、母語と映像を組み合わせることです。安全に関わる注意点や、間違えやすい動作は、文章で説明しきろうとせず、映像で見せて母語のナレーションで補う、という形にすると伝わりやすくなります。これは、外国人スタッフへの技能伝承を、口頭の説明に頼らずに進めるうえでも効いてきます。
まず日本語版を整えてから多言語へ: いきなり全言語をそろえようとせず、まず日本語版の手順を、現場で迷わない品質まで仕上げることをおすすめします。元になる手順がしっかりしていれば、そこから展開する各言語版の質も安定します。多言語化は、土台となる1本ができてからの工程として進めると無理がありません。
専門用語や部品名の扱い
現場の方からは、専門用語や社内で決まった部品名は、無理に翻訳せず日本語のまま残したい、というお声をよくいただきます。訳語を当ててしまうと、かえって現場で通じなくなることがあるためです。棚や機器に貼られた実物のラベルは日本語のままですから、手順書の言葉だけを訳してしまうと、目の前のものと呼び名が一致せず、かえって迷いを生むことがあります。こうした語は、日本語の表記に加えてローマ字で読み方を並べておくと、母語の違うスタッフでも音で覚えやすく、日本人スタッフとの受け渡しもそろえやすくなります。
受け入れの現場で扱う言語も、以前より幅が広がってきました。ベトナム語を筆頭に、インドネシア語、日系ブラジル人の方に向けたポルトガル語、ミャンマー語など、拠点や職種によってさまざまな母語のスタッフが一緒に働く場面が増えています。訳し方をそろえたい語も、言語の数だけ広がっていくことになります。
Flowbaseでは、AIチャットを通じて手順書を多言語に変換でき、字幕だけでなくナレーション音声も多言語に対応しています。一方で、専門用語をあらかじめ登録して、どの言語でも訳し方を統一する、といった機能については、順次対応を進めている段階です。現時点では、訳したくない語はローマ字併記で残したり、変換後に手直ししたりする形でご案内しています。
言葉の壁は、採用や育成の現場で見えにくいコストとして積み重なります。母語で、見て・聞いて分かる手順を用意することは、外国人スタッフが早く立ち上がり、安心して働けるための土台になると、私たちは考えています。多拠点マニュアルとして複数の現場で同じ手順を共有する取り組みとも、相性のよい考え方です。
よくある質問
Q字幕だけでなく、音声も多言語になりますか?
はい。Flowbaseは、まず字幕テキストを対象の言語に翻訳し、次にその言語でナレーション音声を作り直します。字幕と音声の両方が対象言語になるため、文字を読むのが負担なスタッフでも、母語の音声で手順を耳から受け取れます。
Qどのくらいの言語に対応していますか?
50以上の言語に対応しています。ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・タイ語・中国語・韓国語・英語など、現場で採用の多い言語をカバーしています。1本の録画から、複数の言語版を用意できます。
Q手順を更新したら、各言語版も作り直す必要がありますか?
元になった手順を更新すれば、各言語版もそこから作り直せます。翻訳を一から外注し直すのではなく、元の手順を起点に各言語へ展開する流れになるため、更新が追いつかずに各言語版だけ古くなる、という事態を避けやすくなります。
Q日本語の手順がなくても、最初から多言語で作れますか?
まず日本語などの言語で1本の手順書を作り、そこから各言語版に展開する流れをおすすめします。土台となる手順を現場で迷わない品質まで仕上げておくと、そこから作る各言語版の質も安定します。
Q専門用語や部品名がうまく訳されないときはどうすればよいですか?
現場で通じている呼び名は、無理に訳さず残すのがおすすめです。日本語の表記にローマ字で読み方を併記しておくと、母語の違うスタッフでも音で覚えやすくなります。変換した後の言葉は手直しできますので、通じにくい訳語は現場で使われている呼び方に直していただけます。専門用語をあらかじめ登録して訳し方を統一する機能は、順次対応を進めている段階です。